埼玉地方会RSV感染症サーベイランスに基づく論文のご紹介
日本小児科学会埼玉地方会では、2018年から県内のほぼすべての小児病棟を有する22病院の協力を得て、RSウイルス感染症による入院患者数を毎週集計しています。このたび、国立病院機構埼玉病院小児科の大西卓磨先生を中心に、本サーベイランスのデータをもとにした論文4編が国際誌に掲載されましたのでご紹介します。データの収集にご協力いただいている参加施設の皆様に、心より御礼申し上げます。
1. COVID-19流行下でのRSV入院の激減(2020年)
Kang Y, Ohnishi T, Yutaka K, Kunikata T, Ichihashi K. Decrease in pediatric inpatients with respiratory syncytial virus infection during severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 pandemic. Pediatr Int. 2022;64:e14717.
2020年のRSV入院数は161例でした。2018年(1,515例)、2019年(1,465例)と比べて大きく減少し、例年みられた秋の流行ピークは認められませんでした。一方、挿管を要した患者の割合は例年と差がありませんでした。社会全体の感染対策が乳幼児のRSV感染も減らした可能性が示されています。
2. 2021年の非典型的なRSV流行
Ohnishi T, Kang Y, Kawano Y, Kunikata T, Ichihashi K. An atypical surge in RSV infections among children in Saitama, Japan in 2021. IJID Reg. 2023;7:124-126.
2021年は第30週頃に、例年より急峻で高いピークをもつ流行がみられ、ピーク後は急速に収束しました。それでも年間の入院数(1,354例)と挿管率は流行前の年と同程度でした。重症化しやすい乳児の年齢構成が例年と変わらなかったことや、パリビズマブ投与が早期に始まったことが背景として考察されています。
3. コロナ禍後も続くRSV流行時期の前倒し(2018〜2024年)
Fujii M, Ohnishi T, Moriwaki K, Kunikata T. Ongoing Shift Toward an Earlier RSV Season in Children: The Case of Saitama After the COVID-19 Pandemic. Jpn J Infect Dis. 2026;79:168-171.
7年間の入院データを解析した研究です。流行前は8月頃だった入院のピークが、2023年・2024年には3月頃へと大きく前倒しされていました。入院患者に占める2歳以上の割合は、流行前の約2割から2021〜2022年に約3割まで増え、その後は低下しています。挿管率は有意差はないものの上昇傾向にあり、今後の継続的な監視が必要とされています。
4. 2026年、RSV流行中に始まった異例に早いインフルエンザ流行
Saito R, Ohnishi T, Kunikata T, Korematsu S. Exceptionally Early Onset of the Influenza Epidemic Season During Ongoing Respiratory Syncytial Virus Circulation in Japan, 2026. Influenza Other Respir Viruses. 2026;20:e70339.
2026年は第34週(8月中旬)にインフルエンザの全国的な流行入りが発表されました。感染症法施行以降で2番目に早い流行開始です。埼玉県でもインフルエンザが第32週に流行開始の目安を超え、同時期にRSVの活動と小児の入院も増加が続いていました。夏季であっても、急性呼吸器感染症の小児ではインフルエンザとRSVの両方を念頭に置く必要があることを示した報告です。
以上、ワーキングの自治医大さいたま医療センター小児科、須賀健一先生にまとめていただきました。
2026年10月30日 埼玉県RSV流行監視ワーキンググループ
大山昇一、金井雅代、國方徹也(文責)、小島拓朗、小林敏宏、是松聖悟、須賀健一、菅沼栄介、清宮綾子、飛彈麻里子、峯眞人
