小児科学会レポート 2016年7月

☆大竹明委員(埼玉医科大学 小児科)

 6月26日の小児科学会理事会で討論された新専門医制度についての情報を中心に報告します。詳細は代議員議長の先生から代議員の先生方へは報告があると思います。私の役割は、私を選んでいただいた先生方への恩返しであり、それは速報と、かみ砕いた分かりやすい情報をお伝えすることと自任しております。

 6月7日に医師会と病院4協会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)から”新たな専門医の仕組みへの懸念について”と題する各医学会長宛の声明が出ました。内容は、”このままの新専門医制度を進めると地域医療が崩壊する恐れがあるので立ち止まって考えて下さい。”と言うものです。すぐその日に厚生労働大臣がこの声明にほぼ同調する”談話”を出し、現在の専門医機構に事実上の”改革指令”を出しました。それに続いて6月15日付けで、日本医師会長と日本医学会長の連名で各医学会長宛に書簡(内容を正直に読むと”新専門医制度は立ち止まりなさい”と書いてあります。)が届き、その後さらに日本医学会長の高久先生から各医学会長に口頭で追加説明がありました(”新制度は立ち止まるな!”とおっしゃったそうです。)。
 そして、6月末の日本小児保健学会期間中に厚労省の課長が小児科学会長の高橋先生を尋ねて、”機構が変わるので、新しい機構が正しい判断ができるようになるまで約1か月間待ってください”とおっしゃったそうです。その間に医学会と厚労省が連携し、新制度を先へ進める様に強く働きかけるのであろうと推測しますが、これがうまく行かず結局日本医師会の考えの方が勝ち、制度が全く動かない可能性が残っているのも事実です。
 以上を基に、主に初期研修医へ向けた総論的な声明がまもなく小児科学会HPに出されますのでご確認ください。今回はあくまでも総論的なもの(こどもの総合医の養成、地域格差をなくすetc.)で、具体的な事項は次回の理事会(7月24日)で決まります。

 なお私は、①和文誌編集委員会、②小児慢性疾病委員会、③小児医療委員会(在宅等の小児療養環境の整備)、の担当になりましたので、こちらの情報も適宜お知らせします。私が理事をやっておられるのも先生方のお陰です。今後とも、どうぞ宜しくお願いいたします。

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☆松原知代委員(獨協医科大学越谷病院 小児科)

先日の理事会では、専門医機構がどうなるか全く先は読めないので、とにかく来年から小児科医になりたい人が不安にならないように、損をしないように、小児科医が減らないように方策を考えるということです。
さきほど、m3.comに日本専門医機構の新理事が掲載されていました。

私は①和文誌編集委員会、②健康診査委員会、③男女共同参画委員会の担当です。
宜しくお願いします。

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☆大山昇一委員(済生会川口総合病院 小児科)

平成28年診療報酬改定の小児科関連のポイント
 平成28年診療報酬改定は、在宅医療の充実に大きく舵を切った内容であることは周知のことです。その中で、小児科関連でもっともインパクトの大きかったものは「小児かかりつけ診療料」の新設です。これは、成人のかかりつけ医に相応するものとして考えだされ、そこにこれまでの日本小児科医会からの要望を盛り込んだ内容となっています。いわば、小児科外来診療料の進化版と言えると思います。要点は、地域の小児救急医療への参加、在宅医療や予防接種や乳児健診などに診療所の先生方が取り組み易くするためのものと考えられます。
 算定要件の中で「当該診療料を算定する患者からの電話等による緊急の相談等に対しては、原則として常時対応すること」という文言があり、これが全国的にその解釈を巡って議論の的となっています。しかし、#8000の利用やさいたま市のような小児一次救急医療のセンター化が実施されている地域では、そちらに誘導することで何ら問題なく解決できるものと思われます。また、県内には小児一次救急の受け皿が十分でない地域も多くありますが、多くの地域の診療所の先生方はすでにこれらの対応は常時行われていると思われます。さらに人口規模が大きいにも関わらず、小児一次救急の受け皿が十分に成熟していない地域については、小児夜間・休日診療料を活用して24時間開設するセンターを早く開設しなさいという厚労省のメッセージのように思われます。行政、医師会、地域の基幹となる病院の間で十分に議論した上で、診療所の先生方が小児かかりつけ診療料を無理なく算定できるように協力することが、県内の小児医療の底上げにつながるのではないかと考えます。
 それ以外の改定内容としては、在宅医療に関するものがほとんどを占めています。中でも、在宅療養支援診療所の算定要件が緩和され小児科診療所でも参加し易くなったことは、在宅医療への参加に足踏みをされていた先生方も一度はご検討していただく価値がある内容と思われます。また、極めて地味ではありますが生体検査や画像診断の通則が改定され、小児加算が幅広く見直されています。出来高算定の施設ではそのままレセプトに反映される可能性がありますし、DPC算定病院でも厚労省に提出するE・Fファイルの出来高部分が膨らむため、将来的には各疾患分類における点数の増点につながることが期待されます。
 学問的に正しい医療を提供していれば自ずと報酬はついて来る、という時代は遥か昔に終ってしまいました。かといってガチャガチャと無理矢理に検査や治療を詰め込んで診療単価を引き上げる医療も認められなくなりました。正攻法で行きながら、診療報酬制度の求めるところを理解し、スマートにレセプトを作り上げる事がもっとも効率の良い診療形態であると考えます。大学病院や地域の病院に勤務される若い小児科医に、ぜひ診療報酬制度について理解していただきたいと思います。

平成26・27年度日本小児科学会社会保険委員会
委員長 大山昇一